Posted at 2011.05.11 Category : ∟江 姫たちの戦国

○小吉さん
天正十三(1585)年十月に「祝言」の記録が残っている小吉さん。これが江との婚姻を示すならば、すでに今回のうちに結婚してしまっているということに。永禄十二(1569)年生まれとのことで、茶々姫と同い年なんですね。ということは天正十三年時点で数え十六歳ですか。ちなみに江はようやく数え十三歳です。
「祝言」は十月で、先代秀勝が亡くなったのが十二月なのですが、病弱だった秀勝に代わる(生前だったことを思うと、更なる?)織田家とのよすがを江と小吉秀勝との婚姻に求めた…というのは考えすぎでしょうか。大義名分か、そのほかの意図があってのことか…それとも信雄による秀吉への接近だったのか…。
○秀吉の人質政策
歴代大河ドラマでも、小牧・長久手の合戦で家康に煮え湯を飲まされた秀吉が折れに折れて家康を上洛させたと描かれる一連の出来事。
今回は、夫と引き裂かれて無理矢理徳川家康の後妻にされる…といういつもの設定とは若干違いました。旭が兄のためになるならば、と進んで徳川家に嫁ぐという流れになっていたのがとても新鮮でした。さすがは女性目線の大河といったところでしょうか。
とかく「政略結婚の被害者」という描かれ方しかされなかったがために、正しくその役割も評価されなかった女性たちはたくさんいます。旭もその一人です。
政略結婚を嫌がった末に、母の病気にかこつけて聚楽第へ戻り二度と徳川家に帰らなかった、なんていわれていますが、「二度と帰らなかった」が正しくないことは『江の生涯』などで明らかにされましたし、聚楽第ができて、大名の妻子は人質として聚楽第に住まうことになっていったのですから、旭も普段は聚楽第とはいっても徳川家の屋敷にいたのではないかなあと思っています。母を訪ねていくことはよくあったでしょうけれども。
最期も、秀吉によってではなく、きちんと家康によって徳川家の夫人として丁重に葬られています(写真は菩提寺の東福寺南明院)。旭が家康夫人としてきちんと役割を果たしていたからこそではないかと思います。
余談ですが、旭の輿入れに際して、「乳母役」としてつけられた女性は四条隆昌の女房(「妻」とも「妾」とも)であった「茶々」という名前の女性でした。
婚礼に際し、筆頭女房の役割もある乳母の役に出自のしっかりとした女性がつけられるという好例です。
→天正14年の茶々姫?(2010/11/23)
旭、大政所を家康に差し出した秀吉の人質政策については、跡部信先生の「秀吉の人質策――家康臣従過程を再検討する――」(『小牧・長久手の戦いの構造』)がとても勉強になりました。跡部信先生は、大阪城天守閣の学芸員さんで、あの「高台院と豊臣家」を書かれた方です。気が付かないうちに捉われている徳川史観に気づくことがあるかもしれません。私は気づかされた結果、旭の役割について考えるようになりました。ぜひぜひ。
○今週の茶々姫?と江
秀吉との距離がちょっと縮まったかな。
実際は、市や勝家が後を託した相手ですから、あそこまで仇としてみていたとは思いませんけれど、結果的に両親の死に関わっているというのは本当なわけで、丁寧に描くととてもドラマティックな二人だよなあと思っています(いつもそのあたりがすっ飛ばされるわけですが)。
今回は馴れ初めを丁寧に描いてくださるとのことで期待していたのですが、秀吉の描かれ方がひどかった分、どうなることかとハラハラしていました。江が早めに秀吉の養女になり、ここ数回の秀吉との関わりで大分挽回していますね。
茶々と一緒にこっそり断食していたエピソードや、今回の「茶断ち、茶々断ち」のエピソードはかなり私好みでした(笑)
ここ数回すっかり秀吉の参謀と化している江ですが、今後茶々が秀吉の寵を受けるようになることに対し、原作ではかなりご立腹してしまいます。
信長のときも、光秀のときも、勝家のときも、江は異常なくらい柔軟にその人物に対する思い込みを改め、理解を示し、馴染んでいました。今回も、秀吉と近い距離で描かれている江がキューピットになってもいいくらいだと思うのですが、なぜか今回はこれまでの展開と違って江が頑固になっているんですよね。「姉上は私が守る!」と誓ってしまったせいでしょうか。
それにしても、秀吉は憎いくらいに二面性(むしろ主によろしくない面)がいやというほど描かれているのに、家康が一貫して大人物に描かれているのはいささか不公平な気もします。後々舅と嫁の関係になるとはいえ、この時点で面識があった可能性は限りなく低く(もちろん伊賀越えを共にしたというのは大河の創作なので)、後に結果的に徳川の世を開く家康と江が入魂なのは、勝者の歴史だよなあ…と敗者に肩入れするものとしては正直複雑な思いです。
愚痴やら感想やら入り乱れていてすみません。
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