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茶々姫をたどる汐路にて

茶々姫研究日記(こちらが現行版になります)

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完子の扱いと偲ばれる茶々姫とお督(お江)の交流

 

写真素材 PIXTA(完子縁の随心院)
(c) ニコラシカ 写真素材 PIXTA



大河関連本に関して、気になる(気にいらない)ところの一つは完子の扱いについてです。


茶々姫をお嫌いな先生は、どうも秀吉と茶々姫が共謀して、秀頼の将来のためにお督(お江)から完子を取り上げてひとり徳川に嫁がせたと定着させたいようですが、果たしてそうなのでしょうか。


私はそうではないと思っています。

完子は、九条忠栄との婚礼で初めて史料にその存在を表します(『慶長日件録』など)。

他の養子女たちや血縁者を鑑みて、もしも秀吉が積極的に完子の存在に口を出していたならば、史料にここまで名前が残っていないことはあり得ないでしょう。またそれは、茶々姫に関しても同様です。

豪姫や小姫のように、可愛がられている描写が一つも残っておらず、また完子のみそのような描写を完全に抹殺する必要性も見いだせません。

(むしろそんなことがあったのなら、茶々姫のエピソードとして後年の史料に好んで残されそうなものです。)


戦国の作法として離別した場合、夫婦の間に男子は婚家のもの、女子は実家のものという習慣がありました。

茶々姫たち三姉妹は母お市に伴われて柴田勝家の許へ同行しましたが、これは信長がすでになく、織田家の家督は秀吉の貢献する三法師丸が指名されていたなどの背景と無関係ではないと思われます。


お督が徳川秀忠に嫁ぐころ、茶々姫はすでに秀頼を生み、秀頼生母としてある程度の地位を築いていました。嫁いだ妹たちや浅井家縁の人たちにとって強力な後見であったでしょう。

また、お督自身秀吉の養女として徳川秀忠に嫁ぎますので、豊臣家そのものもまた実家であるのです。

お督は徳川に嫁いでからすっかり徳川の女になったとおっしゃる方もいらっしゃいますが、これもそうではないと思います。秀吉没後もお寧が敬われたように、お督が「大御台所」として他の御台所や老女などとは比べ物にならないほど敬われたのは、お督にとって秀吉の養女であるという肩書も影響していたのではないかと思われるからです。


また、お督が九条忠栄夫妻と交流していたことや、お督が忠栄らと共に徳川家光の御台所探しに奮闘したというエピソードからは、物心つく前の完子を豊臣に預けてから全くの没交渉になっていたわけではなく、お督と完子が交流を持ち続けていたことがうかがわれます。

完子を五摂家の夫人たるべく養育したのは茶々姫ですから、当然完子に字を教え、母との文のやり取りの面倒を見ていたのは茶々姫であったはずです。

豊臣側では城とともに灰と化し、徳川側では抹殺されてしまったでしょうけれども、完子を通して茶々姫とお督の交流がここで偲ばれます。


事実、大坂落城に際し、千姫退去に茶々姫は近親の海津局を始め侍女の幾人かをお督のもとへ逃がしています。

お督もまた、茶々姫がそうしたように浅井の親族家臣を大切に扱い、その方針は中宮となった娘和子にも引き継がれています。


正直、私が書いてきたような顛末も様々な状況証拠から紡ぎだした仮説の一つに過ぎません。

ただ、「茶々姫がお督からとりあげた」、「お督は茶々姫の野望の犠牲になった」なんてことは、どこにも書いていない、決めつけて良いことではないのです。


史料にはただ、お督が羽柴小吉秀勝との間にもうけた娘を、茶々姫が猶子として養育し、花嫁行列、御殿などの準備心づくしで世話して、九条忠栄へ嫁がせた――そう書いてあるのみです。

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プロフィール

紀伊

Author:紀伊
茶々姫(浅井長政の娘、豊臣秀頼の母)を中心に、侍女、ご先祖の浅井家女性(祖母井口阿古など)、茶々の侍女やその子孫、養女羽柴完子とその子孫を追いかけています。
ちょこっとものを書かせていただいたり、お話しさせていただくことも。





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メモ「赤石いとこ」名義で記事を書かせていただきました。

悲劇の智将 石田三成 (別冊宝島1632 カルチャー&スポーツ) 悲劇の智将 石田三成 (別冊宝島1632 カルチャー&スポーツ)(2009/06/06)
…改めて石田三成と茶々姫の“不義”を否定する記事を書かせていただきました。


メモ 参考資料としてご紹介いただきました。

めのとめのと
…茶々の乳母大蔵卿局を主人公描く歴史小説。茶々の祖母阿古の活躍も見どころ。
千姫 おんなの城 (PHP文芸文庫)千姫 おんなの城
…千の生涯を描いた作品。千が見た茶々をはじめとする人々の生き様、敗者が着せられた悪名が描かれる。


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