Posted at 2010.11.16 Category :
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※あくまで茶々姫ファンとしての感想ですのでご了承ください。楠戸 義昭
お江 (静山社文庫)(2010/10/05)

この本の著者である楠戸義昭氏は、以前から私の回りの同志様の間では、「茶々姫嫌い」として有名だったりします。
ですので、今回もある程度は覚悟して読んだのですが...
ところどころ、参考にすべき史料解釈があったり、さまざまな説を検討し直されたりしているのですが、
これがかえって困ったことに、根拠のない茶々姫の意思や思いも同列に、断定的に書かれているんです…
例えば、お江の度重なる結婚には秀吉だけでなく茶々姫の強い意向があったとされていることや、
お江が徳川に嫁ぐ際、完子を置いていったのは、政略結婚の持ち駒がなかった秀吉や我が子かわいさで妹や姪を秀頼のために犠牲にすることをいとわない茶々姫が強引に取り上げたから…という下り。
まるで見てきたかのように語られるこれらの部分は、茶々姫ファンにとって、胃が痛くなる展開です。
秀頼に対する教育方針は茶々姫が公家にかぶれたため、完子を九条家に嫁がせたのもそれが理由、それらが豊臣家が衰退した原因…
そのあたりは見慣れてしまった、食あたりを起こしそうな展開ですね。
秀吉没後の豊臣家が公家対策に熱心だったのは、それが豊臣家の生き残る道だったからこそ、お寧さんともども力を尽くしていたのではないでしょうか。
秀頼の側には槍の渡辺糺、弓の六角義治など、茶々姫は武術の師も揃えていました。
茶々姫が自分より偉くなったお江に忸怩たる思いを抱いていたことも、よく言われますが、わたしはそのような感情をうかがい知るものは見たことがありません。
あるのは、待望の男児(家光)誕生に喜ぶ手紙です。
さきに書いた通り、ところどころの考察は大変に参考にさせていただきたいので、「読まなければいい」と割りきれないだけに、余計複雑です…
これを読んだ方が、茶々姫はこういう方だったのか…と思われるととても残念で悲しいです。
昔から、嫌いな方は毛虫のように嫌われますし…
また、じっくり読みたいのですが…ただただやはりそこが残念。